あの人の臨醐山黒酢レシピ Rinkosan Black Vinegar Recipe
料理にまつわるコーディネート、スタイリング、レシピ制作を中心に、雑誌や書籍、広告で活躍する冷水希三子さん。季節の味を大切にした料理は、いつもハッとするような素材の組み合わせ。おいしさはもちろん、色鮮やかで美しい。冷水さんのキッチンを訪ねると、作業台の上の吊戸棚にはさまざまな調味料がぎっしり。洗練された冷水さんの料理を支える調味料のひとつに、臨醐山黒酢がありました。
「実は関西に住んでいた頃は、あまり黒酢を使っていなくて、使うとしたら中国の香醋。日本の黒酢は中国のものに比べると、コクが足りなかったり酸がたちすぎる感じがしていて……。でも、関東に出てきて鎌倉に住み始めたとき、紀ノ国屋で臨醐山黒酢を見つけて試してみたら、コクや甘みがあって酸がやわらかく、中国の香醋のまろやかさにいちばん近い気がしました。ラベルに水墨画のような絵が描かれていて、名前もおもしろいし、臨醐山って何だろう? 中国の山の名前かな? とずっと思っていました」
冷水さんが関西から関東に拠点を移した14年ほど前、スーパーのお酢売り場の中でもひときわ目を引いたという臨醐山黒酢。そのネーミングが、内堀醸造の本社がある岐阜県八百津町の大仙寺の山号「臨滹山(りんこさん)」からつけられたと聞いた冷水さん。
「渋いですね。内堀醸造といえば、私の中ではりんごのイラストが可愛い有機りんご酢のイメージでしたが、臨醐山黒酢はおじさんっぽい(笑)。同じ会社の商品とは思えないほどデザインに統一感がないけれど、使う側からすれば、会社の名前で買っているわけではなくて、この黒酢の味が必要だから買っています。私の料理は、黒酢は臨醐山黒酢でないとダメなんです。なので、雑誌などで黒酢を使ったレシピを紹介するとき、臨醐山黒酢とは違う黒酢で作ったら、この味にはならないのだろうなあと、いつもちょっとドキドキしてしまうんですよね」
料理教室であれば、生徒は目の前で冷水さんが使っている臨醐山黒酢を見ることができ、同じものを買って作ることができます。でも、雑誌の場合は「黒酢」としか書かないため、読者は当然自宅にある黒酢で作ることに。
「みんながどの黒酢を使っているかはわからないのでドキドキです。それほど他の黒酢と臨醐山黒酢とでは、コクと酸の立ち方が違います。特に黒酢をたっぷり使う料理を雑誌などで紹介するときは、レシピで少し砂糖の量を増やしたりすることもあるくらい。香醋であれば、ちょっと強めにはなりますが、まだ近い感じにはなるのでいいのですが、私のレシピに関しては、黒酢メインのときこそ臨醐山黒酢です」
と今回紹介してくれたのは、
鰹のたたき 黒酢ハーブカルパッチョ。
鰹のたたきの上に、賽の目に切った野菜とハーブがたっぷり。黒酢とハーブの組み合わせはちょっと意外な気もしますが…。
鰹のたたきの上に、賽の目に切った野菜とハーブがたっぷり。黒酢とハーブの組み合わせはちょっと意外な気もしますが…。
「以前、中国西南部の雲南州を旅行したとき、料理にミントやディル、パクチー、フェンネルをものすごく使っていて、ハーブと中国の香醋って相性がいい。だから臨醐山黒酢も当然ハーブと合います。そのうえ、バルサミコのようなニュアンスがあるので洋風料理にも自然になじむし、ワインにもぴったり。よく行くヴァン・ナチュール(自然派ワイン)がおいしい洋風居酒屋に、熱々のオムレツにバルサミコをかけたメニューがあるのですが、臨醐山黒酢をかけても絶対おいしい! っていつも思います。ちなみにこの料理に合わせるなら、マセラシオンした(ぶどうの果皮も漬け込んで醸した)ワインがおすすめ。皮のニュアンスが黒酢に寄り添ってくれそうな気がします」
(Edit & Text : Noriko Wada)