「料理に使う道具や材料は、少なければ少ないほどいい」がモットーの料理研究家、角田真秀さん。ほとんどの料理をフライパンと片手鍋で作り、味つけも塩、酢、しょうゆ、みそといった基本調味料が中心。素材の味を生かした、シンプルなレシピが人気です。「お酢を使うのが上手ですね」とよく言われるという角田さん。「ずっとお酢の本を出したいと思っていました」という念願が叶い、料理研究家として独立して10年目に『からだが整う「酢」の料理 食欲のない日もこれさえあれば』(技術評論社)を上梓。そんな角田さんが、長年愛用しているのが内堀醸造のお酢でした。
「内堀さんのお酢との出会いは、じつは『臨醐山黒酢』が最初。両親が東京・九段下で営んでいた飲食店で使っていたんです。和食居酒屋だったので、お店のメニューでそこまでたくさん使うわけではなかったのですが、賄いを作るときに重宝していました。コクがあるので、炒めものや煮物の味にインパクトを出したいときにちょうどいい。使うたびに、この黒酢はどうしてこんなにおいしいんだろう? 中国のお酢だからかな? と思っていました。ラベルの墨絵と墨文字が中国っぽいですから(笑)」
実家の手伝いを経て料理研究家として独立するとき、さまざまなメーカーのお酢を試したという角田さん。
「お店で主に使っていた米酢はすっきりしたきれいな味でしたが、一般の人が家庭で使うには味のバランスを取るのが難しい。いろいろ試した結果、普段の食事にいちばん使いやすく、価格も良心的だったのが、内堀さんの『本造り米酢』でした。そこで初めて『臨醐山黒酢』も同じ会社が造っていると知ったんです。それが2015年の夏。今年で11年目になりますが、購買記録を見ると、本造り米酢は70本以上買っている。恐らく私が日本でもっとも使っているのではないでしょうか(笑)」
内堀醸造で「本造り米酢」と名のつく米酢には、「美濃特選本造り米酢」と「本造り米酢」があります。角田さんが愛用しているのは「本造り米酢」のほう。
「穏やかな酸味でバランスがよく、いろいろな料理に使いやすくて重宝しています。なぜ私は『本造り米酢』のほうが好きなのか、この10年間ずっと考えていたのですが、先日、長野のアルプス工場を訪ねて、『美濃特選本造り米酢』のほうが使っている米の量が多いので旨味が強いと聞いて納得しました。
そもそも私は、家で旨味の強い料理を食べたくないんです。食べ疲れしてしまうから。毎日家で食べる料理は、自分の体にしっくりくるもの、食べてほっとするもの、疲れない味のものがいい。旨味の強い料理は、たまに外で食べれば十分。家の料理で、そこを目指す必要はないのでは? お店の味と競わなくてもいいのかなと思います」
そんな角田さんの考え方がよく表れているのが、中華チェーン店のメニューを自宅用にアレンジした「豚キムチ酢炒め」です。
「若い頃、中華チェーン店の豚キムチ炒めが好きでした。でも、今の私にはちょっとヘビー(笑)。とはいえ確かにおいしかった記憶はあるので、ふと家で食べたくなるときもある。そこで、キムチをあらかじめ『本造り米酢』で和え、炒めるときにも『本造り米酢』を加えて、さっぱり食べられるレシピを考えました。
二度目の米酢は、いわば料理酒の代わり。そもそも米酢は、日本酒造りと同じ工程を経て造られているので、料理酒として使わない手はありません。いい料理酒を使うより、いい米酢を使ったほうがコストパフォーマンスもいい。どうしてこんな値段で売っているの? と不思議なくらい、お得な調味料だと思います」
そんな角田さんが今回教えてくれたのが、「本造り米酢」をたっぷり使う「甘酢シャケ」。
「実は私、この料理で名を成したんですよ。撮影現場のお弁当やケータリングを始めた10年前から作っていますが、これをメニューに入れると、必ずといっていいほど『どうやって作るの?』と聞かれます。ある著名人の方からは、『同じものでいいから、毎回これを入れて』と言われたくらいです」
鮭の切り身を甘酢としょうが、梅干しで煮る「甘酢シャケ」。お弁当の鮭といえば塩焼きが定番だからこそ、焼き目のない姿にまたびっくり。そしてひと口食べれば、ふっくらとした食感と、さっぱりとした味わいにまた驚かされます。米酢の酸味が鮭の脂をすっきり引き締め、しょうがと梅干しが後味を軽やかに。一緒に煮た野菜にも甘酢がしっかり染み込み、箸が進みます。
「焼き鮭と違って煙も出ないし、フライパンひとつで、たった5分で作れるので、みんなリピートしてくれますね」
そしてもうひとつ、酢を使った魚料理として教えてくれたのが、「ブリときのこのビネガー蒸し焼き」。
ブリをバターで炒め、好みのきのこと「純ワインビネガー」で蒸し上げるだけ。白ワインビネガーのキリッとした酸味がありながら、バターで炒めているので香りとコクも加わります。
「これはわが家の定番。もちろん『本造り米酢』でもいいですが、ブリのような脂ののった魚には、『純ワインビネガー』のほうがお酢が生きると思います。いつもは米酢で作っている料理を白ワインビネガーに代えると、よりすっきり、さっぱりした仕上がりになるんです。白ワインビネガーもいろいろなメーカーのものを試しましたが、『純ワインビネガー』は和食に合う印象があります。ポテトサラダは必ず『純ワインビネガー』で作りますし、これだけで酢飯にすることも。酸味がキリッとして、夏は特にお勧めです。合わせ酢を作る手間がないので、気軽にちらし寿司が作れますし、丼にしてもおいしいですよ」
魚を食べたいと思っても、刺身や焼き魚など、つい定番に頼りがち。そんなときこそ、お酢の出番です。酸味を生かすだけでなく、魚の脂を軽やかにまとめたり、いつもの料理にひと味違う表情を加えたり。魚料理のレパートリーを増やしたい人も、魚料理に苦手意識があった人も、角田さんのお酢使いをぜひ参考にしてみてください。
これも愛用しています!
「酸味が柔らかく、甘みと食欲を誘う豊かな香り。旨味が強いので、炒めものや煮物にコクをプラスしたいときに重宝しています。豚のしょうが焼きの最後に加えたり、トマトを和えたり、焼きそばをグレードアップしたいときにもおすすめ。しょうゆの代わりにナンプラーを合わせて使うことも多いですね」
「お店でバルサミコ酢を単品で使うことはないので、国産のバルサミコ酢だとしょうゆやみりんと合わせやすいので気に入っています。木樽のいい香りもちゃんとして本格的」と、お店では鴨肉のソテーに実山椒と合わせてソースにしたり、ビーツやトマトなど赤い野菜の料理に使っているとか。料理教室ではイタリア料理のときに使うことが多く、「使い切れるサイズ感も生徒さんにお勧めしやすく、ありがたく使わせていただいています」
料理研究家。東京・九段下で飲食店を営む両親のもとで育ち、美術系短大を卒業後、販売員、カフェ勤務、実家の手伝いを経て、2015年に夫の和彦さんと共に料理ユニット「すみや」をスタート。ケータリングや料理教室、企業のレシピ監修や雑誌へのレシピ提供、書籍出版、NHK「あさイチ」の番組出演ほか多方面で活躍中。国内の農産物や生産者を応援する活動にも力を入れている。著書に『からだが整う「酢」の料理 食欲がない日もこれさえあれば』(技術評論社)『基本調味料でつくる おいしい常備菜』(マイナビ出版)ほか多数。
取材日:2026年9月9日
(Edit&Text:Noriko Wada Photo:Yosuke Suzuki)